北朝鮮・寧辺の核施設:5000キロワットの原子炉に稼働の兆候あり 新しい軍営地の設置も

「38ノース」のフランク・V・パビアン、ジョゼフ・ S ・バミューデス、ジャック・リウによる独占分析

2月25日に撮影された北朝鮮・寧辺核施設の商用衛星画像をみると、発電機のある建物から蒸気が出ていることや、原子炉周辺の凍結した川の氷が解けていることがわかる。これは5000キロワットの原子炉が稼働を続けているという兆候を示す。

通常の稼働状況の場合、川の周辺に冷却水が排出される。蒸気が立ち上っている様子はこの1年間で何度か見られたが、原子炉が稼働しているという結論を裏付けるような、冷却水の排出は確認されていない。しかし北朝鮮が、冷却水排出用パイプを川の中まで延長することで、水の排出作業を隠匿している可能性は排除できない。

もし証拠が示す通り原子炉が再稼働しているのであれば、これは北朝鮮が恐らく核開発のため、プルトニウム生産を再開したことを意味する。これはまた北朝鮮が、原子炉の稼働状況をさらにうまく隠匿し、今後の監視活動をさらに難しくするため、冷却水排出用のパイプを(川の近くまでではなく)川の中まで延ばした可能性を示す。

寧辺核施設の南側には、Yongchu-dong サポート地区として知られる区域に軍営地が置かれ、この周辺で人員が増加していることが確認できる。この軍営地は、(再処理を目的とした)放射化学研究室と、ウラン濃縮施設を含むかつての燃料製造施設に向かう2本の道路の交差点に設置されている。この駐留地の具体的な役割は不明だが、新施設建設の補助か、現地の警備強化が目的としてありうる。(図1)

Figure 1. Overview of Yongbyon Nuclear Scientific Research Center.

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■5000キロワット原子炉

2月17日と25日の両方の衛星画像では、5000キロワットの原子炉から蒸気が立ち上っていることが確認できる。(図2-3)こうした蒸気は一般的に、原子炉の稼働状況を知るのに役立つ兆候であるが、この動きは通常、川周辺への冷却水排出を伴う。

どちらの写真でも冷却水の排出が確認できないということは、蒸気の立ち上がりが原子炉の稼働とは無関係か、または、排水用パイプが川の中まで延ばされている可能性があるということだ。もしも後者が正しい場合、排水が起きているかどうかの確認ができなければ、監視作業はさらに難しくなる。さらに、排水による川岸の浸食を抑えることにもなる。

しかし、川に解けた氷が見られるということは、原子炉が実際に稼働しており、排出用パイプが川まで延ばされているという結論を導く。川が凍らない夏のような時期には、原子炉の稼働状況を知らせる目に見える動きが減るので、低解像度の熱赤外線画像が、稼働状況を監視するための代替手段となる。

さらに、2月17日に撮影された衛星画像では、原子炉後方に2台の大型トラックが見られ、そのうち1台には青い防水シートのようなものがかかっているように見える。こうしたシートがかけられたトラックは、2015年と2016年にも原子炉後方で見られたが、これらの正確な目的は不明だ。可能性としては、このトラックは(15年16年に見られたものも、今回見られるものも)、取り出したばかりの核燃料や二酸化炭素を収納した容器を、原子炉に移送していると説明できるかもしれない。トラックの1台が実際に青い防水シートで覆われているのであれば、汚染物質や汚染された装置を原子炉から遠ざけるためのトラックであるかもしれない。

Figures 2-3. Steam vapor plumes observed at 5 MWe reactor.

■軍営地と人員の増加

Yongchu-dongサポート区域にある軍営地は2月17日以降に設置された。この軍営地は、寧辺核施設の南側にある中心的な交差点に設置されており、この交差点は放射線化学研究室と、ウラン濃縮や恐らくアイソトープ・トリチウム製造施設を含むかつての燃料製造施設を結ぶものである。

2月25日の衛星画像では、2重構造の野営所が5つ、確認できない白い物体が1つ見られる。野営所では集団が複数見られ、Yongchu-dongサポート区域の管理所の中庭では大規模な部隊が隊列を組んでいる。(図4-5)去年12月以降、この区域にある小さい建物の1棟には新しい屋根が設置された。(図6-8)さらに、火力発電所のある他のサポート区域には最近、新しい野営所が1つ設置された。

過去数ヶ月の間で、寧辺核施設全体の様々な場所、特にサポート区域と施設の中庭にいる人員の数が増えている。この傾向は、2月下旬も続いている。

施設全体での人員増加を見えるようにしているのは意図的かもしれない。おそらく、衛星や外部からの監視の目を惑わすためであろう。(豊渓里核施設で去年4月16日に確認された複数のバレーボールの試合を思い起こさせる。)しかし、いわゆる「防災訓練」や、その他の訓練、メインテナンス作業など一般的な理由のために集合しているのかもしれない。(図9-11)

Figures 4-5. Military encampment set up and groups of personnel observed at Yongchu-dong Support Area.

Figures 6-8. New roof installed in support area.

Figure 6. Old roof at support area. Pleaides © CNES 2018, Distribution Airbus DS. For media options, please contact [email protected].
Figure 7. Old roof removed at support area. Pleaides © CNES 2018, Distribution Airbus DS. For media options, please contact [email protected].
Figure 8. New roof installed at support area. Pleaides © CNES 2018, Distribution Airbus DS. For media options, please contact [email protected].

Figures 9-11. Groups of personnel observed throughout the complex. 

Figure 9. Groups of personnel observed throughout the complex. Pleaides © CNES 2018, Distribution Airbus DS. For media options, please contact [email protected].
Figure 10. Groups of personnel observed throughout the complex. Pleaides © CNES 2018, Distribution Airbus DS. For media options, please contact [email protected].
Figure 11. Groups of personnel observed throughout the complex. Image © 2018 DigitalGlobe, Inc. All rights reserved. For media licensing options, please contact [email protected].

■特殊な鉄道車両の動向

(寧辺の主要な車両基地である)分江車両基地で2月中旬に見られた、変わった「特殊用途の」鉄道車両と、3台の特殊な平台型貨車は、今はもう見られない。(図12-13)これら特殊用途の鉄道車両の正確な目的はいまだ不明だ。しかしこれらの車両は、前回の燃料再処理や燃料補給活動の際には、放射化学研究室と南東側の車両基地の両方で確認された。しかし、こういった再処理などの活動が最近も行われたかどうかを検証する術はない。

Figures 12-13. Specialized rail cars observed on February 17 are no longer present at facility.

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